2011年07月22日

才気みなぎる新人の作品

「叫びと祈り」 梓崎優 著 東京創元社 読了。

6月21日に読み始め、6月26日に読み終えている。

海外の動向を分析する雑誌社に勤める斉木を主人公とした全五話からなる連作短編集。
一話の「砂漠を走る船の道」は、第5回ミステリーズ!新人賞受賞作であり、この受賞作にさらに四話を加えて一冊の本にしている。
新人賞受賞作に書き加えて一冊の本にしたところは「告白」に似ているが、「告白」はあくまで長編だが、こちらは連作短編集。

しゃれではなく、一話一話に才気が感じられる。
ミステリとしてどうなんだという疑問を感じる話もあったが、それを補って余りあるミステリ作家としての才能を感じた。

特に題名にも使われている四話目の「叫び」と五話目の「祈り」には、かなり心を動かされた。
表題作として使われるのも納得の作品だと思った。
特に「祈り」は、この作品があるから連作短編集として意味を成すという、いわば作品の心臓とも言える話だ。

またミステリとしての楽しみだけでなく、サハラ砂漠やスペイン、南ロシア、ブラジル奥地といったいろんな地域を舞台にしているのも興味深く読めたことに一役買っている。
それにしても著者は、各国事情に詳しい。
文献から連想して執筆したのか、あるいは実際に現地を訪れた経験があるのか、ちょっと物語とは関係ないところに興味を持った。

著者は1983年東京生まれとある。
まだ20代の若さでこれだけの作品が書けるとは驚きだ。
まだまだ面白い本を書いてくれそうな雰囲気がある。
今度は長編が読みたいと思う。
posted by s-crew at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

詩学であり史学でもあり

「ベースボールの詩学」 平出隆 著 講談社学術文庫 読了。

6月15日から読み始め6月24日に読み終えている。

著者平出隆は大学教授だが、詩人・作家としても知られている。
あるいは一部の人には“プロの”草野球愛好家として知られているかもしれない。
ファウルズという草野球チームを主宰し、年間65試合(一時期のプロ野球の1シーズンの試合数の半分)を行っていた。
大学教授であり、詩人であり、草野球愛好家でありといった部分が絶妙にブレンドされた本がこの本だと思った。

野球にちなんでいるのだろう、全部で9章からなる。 
学術文庫に収められたこともあり、もっと統一性のある内容かと思ったが、アメリカあり、日本あり、歴史について深く掘り下げたと思ったら、野球の詩的側面を前面に出したりと統一性というよりは多様性が強く出ているように感じた。
あとがきを読んで知ったのだが、初出の発表雑誌がいくつかに分かれていて、そのことが多様性を強く感じた要因だと思った。

この本ははじめに筑摩書房から単行本として1989年に刊行された。
同時期に著者は岩波新書から「白球礼讃」という本を刊行した。
この「白球礼讃」は、出版されてすぐ購入して読んだ覚えがある。
こちらは草野球に関しての本だった。
「ベースボールの詩学」も書店の店頭で見かけた記憶はあるが、単行本ということもあり購入には至らなかった。
それが20年以上経ってから文庫になり、とうとう読むに至った。
何か歴史を感じる。

これからも単行本時には読まなかった話題作やロングセラーが文庫になったら、着実に押さえて読んでいこうと思う。
この本は、そういったことを再認識させる一冊となった。
posted by s-crew at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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