2013年08月10日

わかり易過ぎるプロット

「ソフト・ターゲット」 スティーヴン・ハンター著 公手成幸 訳 扶桑社ミステリー 読了。

スワガーサーガに新たなキャラクターが加わった。
この小説の主人公、レイ・クルーズがその人。
ボブ・リー・スワガーとはどういうつながりかはあえて書かない。
まあ、前作「デッド・ゼロ 一撃必殺」を読んだ方ならご存知のはず。

物語のプロットは極めて単純だ。
アメリカ最大級のショッピングモールが十数名のテロリストによって制圧された。
たまたまその場に居合わせたレイ・クルーズが悪のテロリストたちを討つべく立ち上がる。

またテロリストがイスラム教徒のソマリア人というのがわかりやすい。
わかり易過ぎてそれで良いのかと思う。
単純に書いてしまえば、お前ら悪いやつだから征伐するというスタンスで深みが感じられない。
善良なソマリア人がいても立場がないな、これでは。

読んでるうちに、読む進める意欲が減退した。
それでも何とか読み終わり、訳者あとがきを読む。
すると次回作は、もしかしたら面白くなるかもと期待を持った。
逆を言えば、これで期待を裏切られたら、もうこのシリーズを読むのはやめようと思っている。
おそらく、今年中に刊行されると思われる。
ワクワクというよりドキドキして刊行を待ちたいと思う。
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2013年08月09日

1つの風景に1つのコラム

「にっぽん鉄道100景」 野田隆 著 平凡社新書 読了。

総合情報サイトAll About「鉄道」のガイドでもある野田隆が、鉄道の風景をもとに100編のコラムをものした。
それがこの本。
私は6月23日に読み終えている。

目次は以下のとおり。

第1章 海と川のある風景
第2章 山のある風景
第3章 街の中のユニークな風景
第4章 不思議な風景
第5章 日本の「はしっこ」に降り立つ
第6章 「ここにしかない」風景
第7章 懐かしい風景
第8章 乗ってわくわく、見てわくわく
第9章 残念な風景、哀しい風景
第10章 個性派車両が行く
第11章 鉄道遺産を見に行く

想像がつきやすいものもあるが、つきにくいものもある。
例えば第4章の不思議な風景、これはつきにくいのではないかと思う。
その中のコラムで「東海道新幹線から見える気になる看板」というものがる。
ははーんと思い当たる方もいるのではないか。
白地に赤の文字で「727」と書かれた立て看板のことだ。
こういうコラムを読むと、鉄道に乗ったら車窓から外ばかり見てしまうかもしれない。

総じて面白く読めた。
ただ「残念な風景 哀しい風景」で、ホームドアが残念な風景と書かれている。
私はこれは安全面から考えてもっと導入すべきものと思っている。
著者のほうが、よりテツ目線が強いのかもしれない。

こういった本を読むと、実際に乗ってみたくなるから困る。
一つ位はこの夏休みの間に乗ってみたいと思う。
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2013年08月08日

あるいは聖女による救済

「聖女の救済」 東野圭吾 著 文春文庫 読了。

この本を読み終わったのが6月22日、なんか内容が朧になってきている。
思い出せる範囲で、この本を紹介したい。
本の感想は、しばらくこんな感じが続くことになりそうだ。

まず被害者の男性像に、こんなやついるのかと思わされた。
そしてこの男性の妻が、容疑者なのだが、聖女のように描かれている。
だからこの女性がタイトルでいうところの聖女だと思って読み進めていた。
シリーズキャラクターの草薙刑事が、この容疑者は真犯人ではないと奔走する。
この草薙刑事の行動が「聖女の救済」の意味だと思ったのだ。
が、物語が佳境に入ると、別の意味であったことがわかる。
なるほどね、さすが東野圭吾、ツイストを加えている。

ガリレオシリーズの肝ともいえる物理トリックだが、フーンという感じで、わかったようなわかってないようなというちょっと情けない受け取り方になってしまった。

期待値が大きい分だけ、読んでみると今一感が出てきてしまうが、先入感を抜きにすれば、肩がこらずに適度な緊張感があって読めるシリーズだ。
映画化やテレビドラマ化とは関係なく、シリーズを読み進めて行こうと思う。
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2013年07月05日

電王戦へとつながる一局

「頭脳対決! 棋士vs.コンピュータ」 田中徹 難波美帆 著 新潮文庫 読了。

このところ将棋本を何冊か読んでいる。
それだけ刊行されているということも言えると思う。
そんな中、興味深い将棋本が刊行された。
コンピュータ将棋に関する本だ。

今年三月から第二回電王戦が行われたことは、新聞報道などでご存知の方もいるだろう。
そのルーツを探れば、2010年の清水市代女流王将対コンピュータソフト「あから2010」にたどり着く。
この対局に至る道筋から、対局自体の観戦記、さらにコンピュータソフトの今後を記したのがこの本である。

各章を挙げてみよう。
第一章 日本将棋連盟への挑戦状
第二章 「知能」の探求
第三章 天性の勝負師・清水一代
第四章 「あから2010」と多数決合議制
第五章 清水市代女流王将vs.「あから2010」
第六章 コンピュータが見せた「人間らしさ」
第七章 科学者たちが夢見る「アトム」
第八章 ロボットに「心」を宿らせる
第九章 「歴史的一戦」が遺したもの

第五章が位置的にも内容的にも中心になる。
将棋に詳しくない人でも読めるよう苦心して解説をしている。

できるなら、電王戦についてもこういった本が出てくれればいいと思う。
そうすれば将棋界にもっと話題が集まるだろう。
あるいはすでに書かれていて、私が知らないだけかもしれない。
ともかく様々な将棋本が出てほしいと思う。
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2013年06月27日

また語り口に酔えた喜び

「償いの報酬」 ローレンス・ブロック著 田口俊樹 訳 二見文庫 読了。

マット・スカダーが帰ってきた!
前作「すべては死にゆく」を読んだときには、もうこのシリーズは読めないと思っていた。
そのことはこのブログでも書いた。
http://orangev.seesaa.net/article/32757847.html
ところが帰ってきてくれたのだ。

70代を迎えたスカダーが30年前を振り返るという回顧譚の形式になっている。
なるほどこれなら終わったと思われたシリーズでも続編が可能だ。
希望を書かせてもらえれば、まだまだこのシリーズを読みたい。
読ませてもらいたい。

30年前というのは、マット・スカダーシリーズの一つの頂点という評価のある「八百万の死にざま」の後の時期にあたる。
禁酒を始めて3ヶ月ほど。
そんな時期に幼なじみの殺人事件に直面する。
今とは違いGOOGLEもスマホもない時代、地道な訪問と電話での聞き込みで捜査を進めるスカダー。
極端なことをいえば、謎の究明には重きを置いていない。
その語り口に酔わされる。

上でも書いたが、この様式ならばまだ続編は可能だろう。
マンネリに陥るかもしれないが、それでもスカダーシリーズを読める喜びのほうが大きい。
次のシリーズ作品を心待ちにしたい。
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2013年06月25日

新宿で本を買わせて85年

「新宿で85年、本を売るということ」 永江朗 著 メディアファクトリー新書 読了。

住んでいるところにもよるのだろうが、本好きの人なら一度は紀伊國屋書店へ行ったことがあるのではないか。
日本の書店を代表するチェーンといっても差し支えないだろう。
そんな紀伊國屋書店は85年前に新宿で創業された。
この本には85年の歴史が詰まっている。

著者の永江朗は、フリーのライター。
「哲学からアダルトビデオ」までの範囲の広さを誇り、著書である「不良のための読書術(ちくま文庫)」を読んだことがある。
また出版業界の業界紙によく寄稿しているので、そこで文章をよく読みもしている。

序章、終章を含めて、全部で九つの章からなっている。
序 章 ぼくの紀伊國屋書店
第1章 創業(1927〜45年)
第2章 空襲から(1945、46年)
第3章 再始動(1947〜63年)
第4章 新宿から各地へ、世界へ(1964〜79年)
第5章 本店の誇り(1980年代)
第6章 変わる書店業界のなかで(1990年代)
第7章 ライバルたち(2000年代)
終 章 「うちは本屋ですから」(現在)

第1章から第3章までが起、第4章・第5章が承、第6章・第7章が転に相当しようか。
紀伊國屋書店は、このような歴史を経て大きくなって来たんだなあ。

歴代社長といった上層部だけでなく、現・元の書店員にもインタビューし、生の声が聞けたところは面白かった。
ただ、ここに載せる発言だけに、甘めな発言ばかりだったのは仕方のないところか。

紀伊國屋書店は、その歩みを止めない。
業界のリーディングカンパニーであり続けるだろう。
そして私も紀伊國屋書店新宿本店へ、本を探しに行くことだろう。
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2013年06月20日

ライザは罠に身を投じた

「機龍警察 自爆条項」 月村了衛 著 ハヤカワ文庫 読了。

“至近未来”警察小説である『機龍警察』シリーズの第二弾。
一作目は状況の説明にある程度重きを置いていたように感じたが、今回は紹介済みだからか深いところまで分け入っている。

警視庁特捜部は3人の傭兵と契約したことになっているが、今回はその中の元IRF(IRAから派生した団体と位置づけられている)のテロリスト、ライザ・ラードナーが主人公。
物語世界の現在の東京と、過去のベルファストとロンドンとが交互に語られ、ライザがなぜ日本で傭兵として働くようになったかを浮き彫りにしている。

ジャック・ヒギンズ等の小説で、IRAといった組織、あるいはベルファストといった地名はなじみがある。
その分、この小説にも十分に感情移入ができたように思う。

ライザ・ラードナーと彼女の機甲兵のメンテナンスを担当する鈴石緑との関係の変化も、この小説のひとつの読みどころかもしれない。
本を小道具に使うのもいい。

ちなみにこの小説は、日本SF大賞を受賞している。
それだけの面白さはあると私も思う。
うまく伝えられるか怪しいのがもどかしい。

ともかく、この第二弾は面白かった。
第三弾もすでに刊行されているので、近いうちに買って読もうと思っている。
『機龍警察』シリーズは、長い付き合いになるかもしれないという気がしている。
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2013年06月18日

野球界から学問の世界へ

「新・野球を学問する」 桑田真澄 平田竹男 著 新潮文庫 読了。

桑田真澄の名前は多くの人が知っているだろう。
では平田竹男はどうだろう。
野球界よりもかえってサッカー界のほうが知っている人が多いかもしれない。
2002年に日本サッカー協会の専務理事になった人である。
官僚からの華麗な転進と話題になったのを覚えている方もいるだろう。
現在は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授で工学博士でもある。

この「新・野球を科学する」は二人の対談本である。
もともとは「野球を科学する」の題名で2010年に刊行された本だった。
これが第一部。
その後の野球界やスポーツ界全般の情勢を踏まえて新たに対談し、第二部として語り下ろし、全二部構成とした。

この二人は早稲田大学の平田ゼミで、指導教授とゼミ生の間柄だった。
この平田ゼミで桑田は優秀な学生だった。
桑田の書いた論文は社会人1年制コースの最優秀論文賞を受賞したほどである。
論文の題名は「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」である。

桑田は『野球道』という言葉にこだわりがあるようだ。
日米野球史に詳しい佐山和夫との共著「野球道(ちくま新書)」という本まで出している。
この本もご一読をおススメしたい。
ただ桑田自身は野球道からスポーツマンシップへと提唱している。

桑田の投げる球を受け取る立場の平田竹男にも著書がある。
「サッカーという名の戦争 −日本代表、外交交渉の裏舞台−」(新潮文庫)である。
おススメばかりしているが、この本もオリンピックのアジア予選がなぜダブルセントラル方式になったのかが興味深く記されていてなかなか面白かったと書いておこう。

ちょうど今日本のプロ野球界は統一球の問題でコミッショナー不信状態あるように思う。
この本の第二部第六章は「リーダーシップなき球界の不幸 世界戦略は」というものだ。
将来的には選手OBがコミッショナーになる道があっていいと思う。
だれがいいのか、この本を読み終わるとやはり一人の名前が浮かんでくる。

と書いたらテレビに桑田が出てきた。
どんなことを話すのか、関心を持って聞くとしよう。
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2013年06月14日

十二本の蝋燭と十二の影

「TOKYO YEAR ZERO II 占領都市」 デイヴィッド・ピース著 酒井武志 訳 文藝春秋 読了。

デイヴィッド・ピースが描く、終戦直後米軍占領下の東京の姿。
三部作の第一弾は小平事件を取り上げた。
今回の第二段は「帝銀事件」、この事件は犯人として捕らえられた平沢貞道の名とともに記憶に残っている。
1955年に死刑と確定されたものの、死刑が執行されぬまま時は過ぎ、平沢は1987年に獄中で死亡する。
テレビでよく取り上げられたような気もするが、今となっては記憶のふちから滑り落ちようとしている。

著者はこの事件を小説化するに当たって、芥川龍之介の「藪の中」のスタイルを取り入れる。
十二人の登場人物による十二の物語が十二の異なる文体で描かれていて、それを読んだ読者が、どれが真実なのかを自身で判断するようになっているのだ。
著者は平沢が犯人と思っているのだろうか。
それは読んでのお楽しみとしておこう。

「小平事件」を取り上げた一作目は、正直読むのがしんどかった。
終戦直後の非日常性の強さばかりが印象に残った。
今回の二作目は、すんなりと小説に入り込めた。
「藪の中」効果かもしれない。

東京三部作の三作目はまだ刊行されていないが、今度は国鉄総裁の失踪と死体発見の「下山事件」を取り上げるという。
鉄っちゃんの端くれとして、三河島事件、三鷹事件とともにこんな事件もあったなと記憶している。
期待して刊行を待ちたいと思う。
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2013年06月12日

ヘタだから?オモシロい

「ヘタウマ文化論」 山藤章二 著 岩波新書 読了。

現代の戯れ絵師こと山藤章二が、日本の文化を語る。
ただそこは山藤巨匠のこと、単純に語るわけではない。

元来、芸は下手なところから上手なところへ磨いていくものだった。
ウマさを追求するのだ。
ところが、ウマさを追求するのではなく、オモシロさを追求する動きが出てきた。
「ウマい」「ヘタ」とは別の尺度で「オモシロい」が表れたのだ。

この「ウマい」「ヘタ」「オモシロい」の関係は、私には村松さんの「善玉」「悪玉」「凄玉」の関係を連想させる。
「オモシロい」が、善悪を超越した「凄玉」にあたるわけだ。
当時のプロレスラーでいえば、ブッチャーやハンセンあたりが相当するだろう。

閑話休題、この本の中で語られるモノマネ論もなかなか面白い。
特にタモリの出現とコサキンのセンスに関してはなるほどと思った。

日本文化には「ヘタウマ」が息づいているという。
その思想が読み解ける、なかなかオモシロい本だった。
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2013年06月07日

奇妙な物語りが交差する

「SOSの猿」 伊坂幸太郎 著 中公文庫 読了。

うーん、何から語ればいいのだろう。
読んでる最中は割と面白いと感じていた。
終りまで読むと、はて?残ったものは何?という感じ。

物語は二つの物語『私の話』と『猿の話』が交互に展開されて進む。
『私の話』は、遠藤二郎の一人称で語られる。
二郎は家電量販店で働く傍ら、エクソシストとして悪魔祓いの副業をしている。

『猿の話』は正体不明の語り手。
西遊記でおなじみの孫悟空などのキャラクターが登場する。
説明しても、あまりピンとはこないかもしれないな。
説明するのに難渋する話ではある。

解説によると、この物語は古くからの伊坂ファンには評判が芳しくないらしい。
この物語は伊坂本人によると第二期と定義されるという。
そして押しなべて第二期の作品は、受けが悪いともいう。

なんか肩すかしを食らったようにも思う。
まあそれでももっと伊坂作品を読みたいと思ってはいる。
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2013年06月06日

羽生の将棋観を引き出す

「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる」 梅田望夫 著 中公文庫 読了。

文句なく面白い。
ここ数年の間に読んだ将棋本の中ではナンバーワンに推す。
それだけの刺激や示唆に富んだ本だ。

やはり「ウェブ進化論」の梅田望夫が、羽生善治について語る、あるいは羽生善治と対談をする。
面白くならないわけがないではないか。

この文庫本、もともとは「シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代」「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?−現代将棋と進化の物語」の2冊を再編集し、加筆修正したもの。
もともとが2冊だなんて、言われなければわからないほど滑らかに繋がっている。
よく出来ている、言い換えれば、うまく編集されている本だと思った。

特に印象に残っているのは第八章の『大局観と棋風』。
ここを読むと、確かに羽生は他の棋士とは違う、(だから勝てるのだろう)と思うのではないか。

第七章と第十二章の羽生と梅田望夫との対談にも唸らされることが多々あった。
梅田は、羽生から多くのことを引き出している。

将棋を指す方ももちろんだが、将棋は下手だけど観るのだったら好きだという方がいたら是非手にとってほしい。
将棋の奥深い世界にはまっていくこと間違いないであろう。
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2013年06月04日

刑事ヴァランダーの苦悶

「ファイアーウォール」 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子 訳 創元推理文庫 読了。

北欧ミステリが元気だ。
その中でも刑事ヴァランダーシリーズは安定感で群を抜いている気がする。
「ファイアーウォール」は今のところ日本語に翻訳されたものの中では最新刊。
それでも現地で発表されたのは1998年とのこと。
もっと早く翻訳されればいいのにと思うのは欲張りだろうか。

題名の「ファイアーウォール」、日本語では防火壁と訳される。
セキュリティに関するIT用語。
1998年当時のスウェーデンですでにIT化が進行していたのがわかる。
こういったIT化についていけない主人公のヴァランダー、程度は違うが私も同じような悩みを持っている。

ヴァランダーの悩みは深い。
その悩みが犯人側につけこまれる原因になったりする。
また今回逆らう部下が出てくる。
ヴァランダーの頭の固さや、考え方の古さゆえ。

最後のほうで、新展開が見られる。
次の作品でどういう展開が見られるのかが楽しみだ。
なんか救われたようでホッとした。

シリーズの残り作品も2作となったらしい。
次の作品の翻訳がすんでないので、同じマンケル作品のノンシリーズものを読んで行きたいと思っている。
ちょっと期待している。
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2013年06月01日

ストレートな題名だこと

「将棋の歴史」 増川宏一 著 平凡社新書 読了。

なんともストレートな題名だ。
まさしく「将棋の歴史」について書かれた本。
著者は将棋の歴史の研究をライフワークとしている。
数多くの発表された著作があるが、私もいくつか読んでいるような気がする。
が、定かではない。
こういうときのためにちゃんとブログに残しておこうと思ったりする。

目次を書き出してみる。
 序 章 将棋伝来の謎を探る
 第1章 中世に栄えた将棋の源流
 第2章 職業として認められた江戸時代
 第3章 宗家一二代「大橋家文書」による真実
 第4章 近代化がもたらした繁栄と衰退
 第5章 戦後の復興から未来へ
著者の名前もさることながら、百科事典の平凡社の香りがプーンとする章立てだ。

この本によると、将棋やチェスの原型は五世紀の北インドで考案されたという。
その後どういうルートで日本にたどり着いたか、そしてどのような形で日本で広まったのかが書かれている。

たまには盤の前から離れて、本を読むという形で将棋と接するのもいいのではなかろうか。
勝ち負けのない将棋の世界がここにはある。
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2013年05月29日

3人の“傭兵”と契約した

「機龍警察」 月村了衛 著 ハヤカワ文庫 読了。

「機龍警察」シリーズがすごいらしい、そんな評判を読んだ。
そこで第1弾から読んでみることにした。

「機龍警察」とはどんなシリーズか。
時代設定は「至近未来」、近接戦闘用の二足歩行型有人兵器である機甲兵装が犯罪に用いられるようになった。
新時代の犯罪に対応すべく、警視庁も特捜部という新たな部局を設立、『龍機兵』と呼ばれる新型機を導入し、その搭乗要員として3人の傭兵と契約した。
以上のような設定でわかるように、SFであり、警察小説でもある。

『龍機兵』とは、モビルスーツのようなものと考えていいのだろう。

第1弾は、キャラクターの説明に重点を置かれているような気がした。
あれ、ここで終わるの?と思った。
それでもと言うべきか、だからと言うべきか、次のシリーズ作品が読みたくなった。
というわけで、現在シリーズの2作品目を読んでいる。
今のところは順調に読めていることを書いておこう。

多分、2作目のほうが高い評価をするんではないかと思っているが、さてどうなりますか。
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2013年05月28日

乗った、読んだ、食べた

「沿線風景」 原武史 著 講談社文庫 読了。

“鉄”学者、原武史による一風変わった書評エッセイ。
まず原教授が首都圏を中心に日帰りの小旅行に出る。
その地にゆかりの本を取り上げる。
またその地で立ち食いそば等を食す。
その記録集である。

わかりにくいかも知れないので、第1話を例に説明する。
この回では東武伊勢崎線のせんげん台ー越谷間を中心に出かけている。
取り上げられた本は、川本三郎『ミステリと東京』、亀和田武『人ったらし』。
そして春日部駅の野田線ホームで立ち食いラーメン店「春日部ラーメン」でラーメンを食べている。

それのどこが面白いのかと思う人もいるだろう。
ところが、意外な事実が覗かれたりして結構面白いのだ、これが。
もっとも、それは私が“鉄”であり、立ち食い蕎麦屋で食うことをまったく気にならない人だからかも知れない。

立ち食い蕎麦屋といえば、原先生、麺類にはめっぽううるさい。
またJR東日本直営の立ち食い蕎麦屋「あじさい」には、かなり辛口だ。
老舗の蕎麦屋が立ち退いて、あとに「あじさい」が入店することがよくあるからと思われる。

時間があれば、いつかこの本に出てくる小旅行をしてみたいと思う。
新鮮な旅になることだろう。
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2013年05月25日

GHQ占領下の東京で、

「TOKYO YEAR ZERO」 デヴィッド・ピース著 酒井武志 訳 文春文庫 読了。

イギリスの作家デイヴィッド・ピースによる終戦直後の東京を舞台にした『東京三部作』の第一弾。
『東京三部作』はすべて実在の事件を元に執筆される予定とのことだが、この「TOKYO YEAR ZERO」では、1946年に起こった小平事件を素材にしている。
小平事件とは、小平義雄が起こした殺人や強姦の連続事件である。

終戦直後の日本の情勢がこれでもかとばかりに書かれている。
失望感、渇望感、戦後の闇。
食傷さえも覚えたが、実際終戦直後はこのような状態だったのだろうと思わされた。

実はすでに『東京三部作』の二作目「TOKYO YEAR ZERO 占領都市」を読み始めている。
こちらでは「帝銀事件」を題材にしている。
こちらのほうが、若干ではあるがより知っているので、やはり、より読めている。

評価は三部作の三作目が出て、読んだところで判断したい。
今のところは良い読者ではないことを正直を書いておきたい。
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2013年05月21日

他人の本棚を覘いた気分

「面白い本」 成毛眞 著 岩波新書 読了。

単刀直入のタイトルだ。
著者が読んで面白いと思ったノンフィクション本100冊を紹介した本だ。

著者はマイクロソフト日本法人の代表を10年に渡って務めた人。
現在、ノンフィクションを専門に紹介する書評サイト『HONZ』を主宰している。
そんな著者が選んだ、選りすぐりの100冊とは?
どの作品も、面白いだろ、ほら?という著者の自負が感じられる。

では私は、その100冊のうち何冊読んでいるだろうか?
実はほとんど読んでいない。
読んだのは以下の二作品。
「マネー・ボール―軌跡のチームをつくった男」 マイケル・ルイス著 RHブックス・プラス
「誘拐」 本田靖春 著 ちくま文庫(私が読んだのは文春文庫)
買ったけど積ん読のままなのが一作品。
「TOKYO STYLE」 都築響一 著
傾向がつかめないな、これでは。

前書きで著者の読書論が語られているのでその段落をそのまま引用したい。
『読書は道楽。そういう割り切りが大事だと私は思っている。成功するためにとか、何かの役に立つようにとか、目的をもって本を読むのはオカド違いというっものだ。それではせっかくの面白い本も、面白くなくなってしまう。本を読むことに何も意味を求めない。純粋に面白ければそれでいい。それが私の読書の理想だ。』
私もこの境地に辿りつきあると言ってしまおうか。
フィクションにも面白い本が数多くあるということも付け加えておきたい。
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2013年05月17日

気合を入れて何とか読了

「ソロモンの偽証」 宮部みゆき 著 新潮社 読了。

今年の春、とても長い作品を四週間かけて読みきった。
それが「ソロモンの偽証」。
第I部 事件、第II部 決意、第III部 法廷の三冊からなり、一冊が700ページを越えている。
三冊あわせれば2100ページ以上、今思い返すとよく読んだものだと感心してしまう。
といっても、読むのが苦痛だったわけではない。
読み味は、さすが宮部みゆき、ぐいぐいと読ませる。
ただ、心の底で物語世界に入りきれないところがあった。
なぜかといえば、中学校を舞台に法廷が開かれるという設定が現実的ではないと思ったからだ。
弁護人から検事役から判事まで中学生が行う。
ここに無理があるように私には思えたんだなあ。

タイトルの「ソロモンの偽証」のソロモンとは、古代イスラエルの賢人の王の名前という。
ある意味を込めてのものだろう。

世の評価は高いが、私には、宮部作品にしては感情移入が出来なかったと今一つだった。
それでも、この小説を読みきるのに四週間かけたことは後悔していない。
また長い宮部作品を読みたいものだと思っている。
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2013年05月01日

将棋も将棋本も熱いぜ?

「捨てる力」羽生善治 著 PHP文庫 読了。

羽生善治の発する言葉を集めた箴言集といえようか。

全体の章立ては以下の通り。
序 章  棋士の日常
第1章  継続するために必要なプロセス
第2章  どんなデータを捨てて何を選択するのか?
第3章  挑戦を恐れない
第4章  勝負の流れに乗る
第5章  好きなことを究める
第6章  棋士の思考法

第2章が一番の読みどころと言ってもいいのかもしれない。
実際、この章の中で『重要なのは「選ぶ」より「捨てる」こと』と言っている。

面白く読んだのは確かだ。
だが、私には白地が多くて、中身の薄い本という印象も持ってしまった。
もったいないと思う。
羽生の本は売れるから、とりあえず出しておけという儲け主義が垣間見えるといったら言い過ぎか。

羽生の本が中心ではあるが、このところ将棋本の刊行が増えているように思う。
出来るだけ読んでいきたいと思っている。
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