2013年04月16日

知的に学問をやりなおす

「学問の技法」 橋本努 著 ちくま新書 読了。

このところ深く考えなくなったような気がしている。
これではいかんなあと思った。
そこで知的な刺激を脳に与えてくれそうな本を探してみて、見つかったのがこの「学問の技法」。
本来の対象は大学生だが、今の私にもいい刺激を与えてくれる本となった。

著者は横浜国大を卒業し、東大の大学院で博士号を所得、現在は北大の大学院で教えている。
大学院で教えている経験がこの本の血となり肉となっている。

全部で9章からなる。
列記する。

第1章 知的モチベーションの技法
第2章 知的体育の技法
第3章 知的生活の技法
第4章 情報収集の技法
第5章 読書の技法
第6章 議論の技能
第7章 問いかけの技法
第8章 レポートの技法 
第9章 論文執筆の技法

一番影響を受けそうなのは第5章の読書の技法。
この中に 4 読んだら読みっぱなしにしないという項目がある。
ここを実践したら、ブログでいい記事が書けそうな気がする。

学問を難しく考えることはないと教えてくれる一冊。
学問をやり直してみようという人にも、いい案内になる本といえるだろう。
タグ:新書 学問
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2013年04月09日

ソフトな鉄子 地下を行く

「地下旅(チカタビ)!」 酒井順子 著 文春文庫 読了。

私の偏見かもしれないが、地下鉄ほど旅情に遠い鉄道はないように思う。
地下鉄、イコール通勤に利用、だから満員ですし詰め、できれば乗りたくないと連想してしまう。
ところが鉄道ファンの中には、地下鉄を愛して止まない人がいる。
この「地下旅!」の著者、酒井順子女史もその一人だ。

著者は書いている。
鉄道がなぜ好きか、それは胎内にいるようだからと。
それなら、地下鉄が好きなのも納得できる気がする。

東京メトロの8路線、都営地下鉄の4路線を中心に、東京以外の路線にも、さらには香港にまで足を伸ばしている。 
私は一応全部の路線に乗ったことはあるが、全区間はさすがに乗ってはいない。
逆に全区間乗っている路線のほうが少ないのではないか。
著者は雑誌の企画で過去に全路線完乗をしている。
うらやましいと思う気持ちが少しだけある。

鉄道本ではあるが、逆に鉄道好きからはあまり受け入れられないような気がする。
やはり旅情を求める人が多いだろうから。
でもこういった本があってもいいと思う。
私にとっては、いろんな意味で力が抜けたところが面白いと感じた本だった。
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2013年04月04日

元汚部屋女とゴミ屋敷男

「うっかり結婚生活 一緒に暮らす二人のルール8」 池田暁子 著 メディアファクトリー 読了。

レジに持っていくのには、正直抵抗があった。
女性をターゲットとする本だと思ったからだ。
でも池田暁子女史のコミックエッセイのファンである私は、勇気を出して、でも何気なさを装ってこの本をレジに差し出した。

いままでに多分4冊池田暁子女史のコミックエッセイを読んでいると思う。
その中に「片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術」がある。
なんだ、『女のための』とある本をすでに読んでいるではないか。
勇気を出す必要なかったか。

今までは整理術の本が多かった。
その点が、私が読む気になる理由であった。
ところが今度は結婚生活である。
それも結婚した相手がゴミ屋敷男。
ところで私は自分のことを汚部屋男くらいだと思っている。
ゴミ屋敷男まではいっていない認識だ。
汚部屋男(女)は、無事に結婚生活を続けられるのか、そんな興味を持って読み進んだ。
やっぱり面白い、なんとかなるものだ。

お相手のキャラが立っていて、コミックエッセイの材料には困らないように思える。
まだまだこのシリーズは続編が出そうだ。
多分また新刊のコミックエッセイを勇気を出してレジに運ぶのだろうな、私は。
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2013年04月03日

彼はロック・アーティスト

「解錠師」 スティーヴ・ハミルトン著 越前敏弥 訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 読了。

原題は「THE LOCK ARTISt」、ロックスターではなく鍵(開け)の芸術家。
主人公は言葉を失ってしまった少年マイケル(マイク)。
彼には二つの特異な才能を持っていた。
一つは絵を描く才能、そしてもう一つはどんな錠も開くことが出来る才能。

前者の才能ゆえに、言葉がなくてもある少女と親密な関係になる。
このあたりはボーイ・ミーツ・ガールの文脈で考えると理解しやすい。
後者の才能ゆえに金庫破りの一味となり、犯罪の世界の中に生きることになる。

この二つの物語が、ほぼ交互に描かれて物語は進んでいく。
この交互にというところがポイントといっていいのかもしれない。
読者にその先を期待させる推進力になっている。

私には登場人物が少ないのがありがたかった。
翻訳ものは、登場人物が多いと、すぐ混乱する。
その点、この小説はその心配がなかった。

腰巻にもあるが、この小説は「このミステリーがすごい!」と「週刊文春ミステリー・ベスト10」の両方で1位に輝いている。
文庫化もされたので、これを機に読んでみてはいかがかと。
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2013年03月27日

「車道走行」で街は快適に

「自転車が街を変える」 秋山岳志 著 集英社新書 読了。

この本のカバーに紹介文が載っていて、それが非常によくまとまっているので引用する。
「エコ、健康志向、低成長時代の価値観の変化、そして災害対応。これらの要因が合わさって、昨今、都市部を中心に自転車利用者・愛好者が急造している。一方で、クルマと自転車のみならず、自転車と歩行者の事故も頻発するなど様々な問題も発生しており、その対策は急務である。
本書は、自転車を社会インフラの中に位置づけ、自転車とクルマと歩行者が共存できる都市空間を構築するための方策を、国内やイギリスでの現地取材をまじえて多角的に論ずる」
まあ、そういう本です。

自転車は軽車両に分類されるため、車道を走らなければならない。
ところが何十年にもわたって自転車が歩道を走ることを容認されてきたので、歩道を走る自転車を見かけることが多い。
まずこの点を正しく認識するところから始まると思う。

断片的にいろいろな知識も吸収できた。
例えば静岡市の本通りに自転車専用レーンがあること。
実際に駿府マラソンを走って確認した。
また去年開催されたロンドンオリンピックでは、「五輪期間中は自転車が最速!」ポスターが貼りだされるほど自転車を奨励したとのこと、知らなかった。

著者は今年50歳になる。
水路・鉄道・自転車など「交通と社会」をテーマに取材・執筆活動を行うフリーライター。
水路はともかく鉄道も手の内となると、将来的にまたこのライターの著作を読むかもしれない。

この時代、もっと読まれてもよいと思った一冊だ。
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2013年03月22日

生きる痛みと悦びの物語

「ふがいない僕は空を見た」 窪美澄 著 新潮文庫 読了。

映画化されたので内容をざっくりとご存知の方もいるだろう。
主人公の高校1年生斉藤くんの視点からはじまる連作長編集。
全部で5編からなり、斉藤くんのあとは、斉藤くんと不倫関係を持つコスプレ好きな主婦、斉藤くんのことがすきな同級生、斉藤くんの幼なじみで同級生、斉藤くんの母親と続く。

そもそもは斉藤くんの視点の部分の「ミクマリ」でR−18文学賞大賞を受賞。
このR−18文学賞、あまりなじみのない文学賞だと思うが、書く人も女性、選ぶ人も女性という女による女のための文学賞。
受賞作を所収したこの「ふがいない僕は空を見た」で山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞も2位に輝く。
このときの本屋大賞の1位は、個人的に組織票の疑いがあると思っているので、この小説が実質1位と勝手に思っている。

生と性の物語だ。
ときに痛く、ときに悦びにあふれる。
深く心に迫るものがある。

本来の対象は、R−18文学賞を受賞した作品もあることから、女性かと思う。
だが、解説で重松清が、この作家の愛読者になると書いているように、男性が読んでも鑑賞に堪えるものだと思う。
私も、この著者がどういった作品を発表していくか、注目していきたいと思っている。
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2013年03月15日

物語の世界へといざなう

「みんなの図書室2」 小川洋子 著 PHP文芸文庫 読了。

4年ほど前に「心と響き合う読書案内」を読んだという記事をアップした。
http://orangev.seesaa.net/article/117585894.html
このときの入れものは新書だったが、そのあとは文庫になった。
それが「みんなの図書室」。
このときはアップしなかったが、今回「2」が出てアップすることとなった。

今までは1年分52冊分が収録されていたが、今回は48冊分とやや減っている。
「春の本棚」「夏の本棚」「秋の本棚」「冬の本棚」と区分けされているが、それほど厳密にやっているように思えない。
題名からしたら「冬の本棚」の「細雪」が、「夏の本棚」に収録されている。
ちょっと不思議。

48冊のうち、読んだことのあるのは6点。
「トム・ソーヤーの冒険」「細雪」「トロッコ」「岳物語」「ティファニーで朝食を」「金閣寺」。
思っていたよりも少なかった。
今思い返すと全部、高校・大学時代に読んでいる。
だからどうだというわけではないけれど。

「2」が出て、この読書案内も「3」「4」と続くのだろうか。
私としては続けて出してほしいと思う。
その本を読むだけでなく、私の好きそうな「みんなの図書室」で紹介された本も読んでいきたい。
この本の中では、そうだな、「鉄の時代」あたりは興味を持ったな。
「1Q84」も読んでおきたいな。
かくして読みたい本ばかり増えていく。
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2013年02月28日

刑事ヴァランダーの憂鬱

「背後の足音」 ヘニング・マンケル著 柳沢由美子 訳 創元推理文庫 読了。

ブログをお休みしている間に刑事ヴァランダーシリーズを読み進めていた。
刑事ヴァランダーは、北欧はスウェーデンの作家ヘニング・マンケルの描く世界に登場するシリーズキャラクターだ。
「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」「笑う男」「目くらましの道」「五番目の女」と発表の順に読み進め、この「背後の足音」が7作目。

この「背後の足音」の解説に、解説らしからぬことが書いてある。
シリーズのうち、初期3作は読むのに苦労するというようなことが書いてあるのだ。
読んだ私も同じ思いを持った。
確かに苦労した。
だが4作目を読んで、報われた気がした。
主人公であるヴァランダー刑事のキャラが確立され、行動が理解できるようになった。
そうなると、ヴァランダー刑事と歳が近いこともあいまって親近感を覚えるようにまでなった。

この作品では、同僚刑事が殺されているのを発見するという場面がある。
出会いや死による別れなどがいきなり出てくるから油断ならない。
人員が減った中、事件解決へ動き出すヴァランダー。
だが疲労の色は濃くなりばかり、さらに健康の面でも不安はつのるばかり。
さて、事件は解決されるのか。

このシリーズは、もう一点翻訳がなされている。
近い将来読もうと思っている。
北欧ミステリ好きにも、警察小説好きにもぜひ読んでもらいたいシリーズであり、作品だ。
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2013年02月26日

金曜夜8時、戦いの殿堂

「新日本プロレス 12人の怪人」 門馬忠雄 著 文春新書 読了。

2012年は新日本プロレス設立40周年だった。
その新日本プロレスにとって記念すべき年の末に出版されたのがこの「新日本プロレス 12人の怪人」だ。
その12人とは以下のとおり。
 アントニオ猪木
 山本小鉄
 長州力
 前田日明
 藤原喜明
 タイガーマスク
 キラー・カーン
 アンドレ・ザ・ジャイアント
 タイガー・ジェット・シン
 マクガイヤー兄弟
 橋本真也
 棚橋弘至
マクガイヤー兄弟がいるので、正しくは12人ではなく、13人か。

著者の名前は「Number」で見かける。
おそらく、その流れで文春新書での出版となったと思われる。

プロレスに関する新書には「名勝負数え歌 俺たちの昭和プロレス」 藤波辰爾 長州力 著 アスキー新書 がある。
この本も私は読んだ。
あわせておススメしておきたい。

中学のとき、馬場派か猪木派かと問われたことがある。
そのときは曖昧に答えたが、今思い返すと猪木派だったんだなと思う。
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2013年02月20日

読後が爽やかな時代小説

「天地明察」 冲方丁 角川文庫 読了。

映画化もされたので、そちらのほうで内容をご存知の方も多いかもしれない。
今までSFを中心に執筆していた冲方丁が単行本としては初めて挑んだ時代小説がこの本になる。
江戸時代に、改暦事業の「総大将」に任ぜられた、本来は碁打ちである渋川晴海の苦闘を綴ったもの。
苦闘と書いたが、読後感は重いものではない。
成功したからかもしれないが、爽やかささえ感じられた。

私はこの本を読む前に映画を見ていた。
主人公の妻となるおえん役の宮崎あおいがいいなと強く思った。
本を読みえて比較してみると、映画のほうが枝葉を切り取って単純化しているように思った。
まあ長さの問題があるからこれも仕方のないことだろう。

小説の中に水戸光圀が出てきて、この光圀を描いた「光圀伝」という作品が冲方丁にある。
これもそのうち読みたいものだと思っている。
チャンバラ小説はちょっと……
だけど時代小説は読んでみたいという方におススメ。
第7回本屋大賞受賞は伊達ではない。
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2011年09月02日

事件の解決は噺のあとで

「道具屋殺人事件」 愛川晶 著 創元推理文庫 読了。

7月21日に読み始め、7月26日に読み終えている。
今日はもう9月だというのに。

落語の世界を舞台にしたミステリ、中篇3篇からなる。
今まで噺家が探偵役というミステリなら読んだことがあるが、ここまで落語の世界を描いたミステリは読んだことがない。
語り部は、落語家・寿笑亭福の助の女房・亮子。
ここは妻とはいわず女房とあえて書きたいところ。
福の助と、かつての福の助の師匠・山桜亭馬春が探偵役といえようか。
馬春は脳血栓の後遺症で言葉が出ないという設定がミソ。
房総半島は館山で、福の助夫婦からの話を聞くと、ボードに短い言葉を書いてヒントを与える。
アームチェア探偵振りが楽しい。

すべての事件が、福の助の舞台での噺を経て解決される。
まさに落語ミステリだ。

こういったミステリを足がかりに落語への関心を高めるのも悪くないと思う。
この小説は、いい入門書の役割も果たしそうだ。

ところでこの本の著者だが、実は読む前は女性だと思っていた。
今までの作品は、美少女本格ミステリーが多かったとのこと。
そのあたりの先入観とペンネームがあいまって、女性と思い込んでしまったようだ。

この作品が好評を博したため、シリーズ化されている。
読後感がよかったので、次の作品も近日中に読む予定だ。
というわけでやはりこの言葉で締めよう。
おあとがよろしいようで。
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2011年09月01日

続けるように努力します

「いつも三日坊主のあなたが続ける人になる50の方法」 佐々木正悟 著 中経出版 読了。

7月18日から読み始め、7月22日に読み終わっている。
比較的短期間で読み終えたのは、本を面白く読んだからではない。
単に一日に方法を10ずつ読んでいったからだ。
もちろん、まったく面白くなかったわけではない。
面白くないのなら途中で読むのを放棄する。
ただ、今まで読んできた著者の本の中では一番心に訴えてこなかったような気がする。

1年以上前に、同じ著者の「いつも先送りするあなたがすぐやる人になる50の方法」という本を読み、このブログでも取り上げた。
今回読み終えた本は、いわばその続編ともいうべき位置にある。
そうか、先送りしたままだからその続編を読んでも心にあまり響かなかったのかもしれないという気がしてきた。

それでもこのブログは何とか続けて行きたいと思っている。
8月はあまり更新しなかったが、この本を取り上げる順番になったのもなにかの巡りあわせということで、あらためてブログの更新に努めたいと書いておく。
続けることでほかのことにもいい影響が出ることを期待したい。
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2011年08月31日

主役級が勢ぞろいの作品

「天使と罪の街」 マイクル・コナリー著 古沢嘉通 訳 講談社文庫 読了。

7月13日から読み始めて7月21日に読み終えている。
読み終わってひと月以上経っているが、内容をどこまで覚えているか定かではない。
とりあえず書き続けてみる。

ロス市警の刑事から私立探偵になったハリー・ボッシュのシリーズもこの作品で10作品目になる。
ハリー・ボッシュシリーズと書いたが、過去のコナリー作品で主役を張った人物が何人も出てくる。
本文の前にある『主な登場人物』から拾うと、ハリー・ボッシュ以外にも、レイチェル・ウォリング、詩人(ポエット)[連続殺人犯]、テリー・マッケイレブなど。
いってみればこの作品は豪華キャストによる今までの総決算的なものと言っていいだろう。

物語の最初から驚かされる。
主要登場人物と思われた人間が死んでいることが明かされるのだ。
コナリーはこういったサプライズがお好きなようで、今までも作品の終わりの時点で、エッと驚かされたことが何度かあった。
だがこの作品では、最初から来ましたよ、並みの作家なら考えもしないな、こんな展開。

物語は3つの視点から描かれていき、だんだんと集約されて結末に至る。
この小説の原題は「The Narrows」、狭い川、さらにいうとロサンゼルス川を指す。
3つの視点が合流し一つの流れとなる展開は、まさに川のごとくであった。

川の流れに乗るごとく、快調に読み進めることが出来た。
上下2巻の大作だが、一週間あまりで読めたのもその証といえるだろう。
それだけ次の展開が楽しみだったということも出来る。

この作品で何人かのシリーズキャラクターとお別れし、ハリー・ボッシュシリーズは新たな段階へと進むだろう。
実は次の作品はもう買ってある。
近いうちに読み始めることになるだろう。
こんどはどんなサプライズがあるか、それも楽しみである。
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2011年08月20日

本はあり続けるだろうが

「出版大崩壊 電子書籍の罠」 山田順 著 文春新書 読了。

7月8日に読み始め、7月15日に読み終えている。
正直、読んでひと月以上経っているのでおぼろげな記憶となってしまっている。
何とか細い糸をたどって本を紹介できればと思う。

著者は大手出版社光文社の元編集者。
出版社の業績不振により希望退職者を募ったところ、著者も手を上げ退職、興味のあった電子出版の世界に立ち入ることとなる。
ところがその電子出版、世間のバラ色の未来図とはまったく異なり、実際に体験してみるとそんな甘いものではないことが身にしみてわかったように記されている。
実録ものの面白さも感じたが、広い意味で出版業界の端くれにいる身としては、やっぱり崩壊への道を歩んでいるのかとむなしい気持ちになった。

そう考えるとこの本の出版元である文藝春秋はよく出版したものだと感心する。
以前同じ新書から「2011年 新聞・テレビ消滅」といった本が出て、このブログでも取り上げたが、出版の崩壊をテーマにした本を出版社が出すというのも器が大きいというか、怖いもの知らずというか。
文藝春秋社らしいといえば、らしいといえるかもしれない。

もともとこの本は某大手出版社が出版中止をしたという経緯をたどっている。
その大手出版社はどこかが気になるところだ。
新社長が電子出版の旗振り役をしているあそこかなと下種の勘繰りをしてしまう。

出版だけでなく、音楽業界やゲーム業界の話も飛び出し、これからの社会を考える上でもヒントになる本かなと思った。
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2011年08月05日

刀城言耶行くとこ事件有

「山魔の如き嗤うもの」 三津田信三 著 講談社文庫 読了。

7月5日から読み始め、7月12日に読み終わった。

『流浪の怪奇小説家』東城雅哉こと刀城言耶を謎解き役とする長編シリーズの第四作。
私が読むのは三作品目となる。
今までこのシリーズを読み進めるのに割と苦労していた。
だが、この作品は一番読みやすかった。
理由を考えてみた。
最大の理由は刀城言耶が早い段階から登場し、主人公の目を通して物語を読み進むことが出来たこと。
また、神田神保町や猿楽町といった、私にはなじみのある地名が出てきたことも理由に加えていいかもしれない。
昨日もそこで飲み会に参加してきたばかりだ。

ミステリとしてどうかという話になると、若干引っかかるものがある。
ネタばれにはならないと思うから書くが、犯人はこの人物でいいのかという思いが生じたのだ。
確かに論理を積み重ねていくと、その犯人になるのだろう。
最後の謎解きのところを読めば、そういった伏線が張ってあったのかと感嘆した。
だけど、この犯人はどうなんだろう。

やっと著者の目論む本格ミステリとホラーの融合に、読むほう(私)があわせられるようになってきたかなと思い始めている。
もちろん作品の出来にも因るが、次の作品を読めば、もっと面白く読み進められるだろうという予感が強くなっている。
このシリーズもさらに読み進めていこうと思う。
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2011年08月03日

著者は野良猫の味方です

「野良猫ケンさん」 村松友視 著 河出書房新社 読了。

6月29日に読み始め、7月7日に読み終えた。

村松さんの十八番ともいえる猫に関するエッセイ集。
ペットというより伴侶といったほうが近かった愛猫アブサンが逝って15年、飼い猫はいなくなったが外猫との付き合いは今でもある。
アブサンがいなくなった分、かえって外猫との付き合いは深くなったというべきか。
そんな外猫の中に一匹、ケンカ三昧の日々を送る猫がいた。
その猫にケンさんと名付ける村松さん、イメージは東映仁侠映画に出てくる高倉健だ。
飼い猫とは違う付き合い方に、それはそれで新鮮さを覚える村松夫妻であった。

猫好きな人は結構あるあると思いながら読み進めるのではないか。
私は猫派か犬派かと問われれば猫派だが、もう40年近く猫は飼っていないのでそれほど思い入れがあるわけではない。
それでも村松さんの猫好きが随所に垣間見れて、ほのぼのといい気持ちになっていた。

ただ第三章に、ベストセラー「アブサン物語」の最終章の一節が約8ページにわたって引用されている。
この部分が、今読み返しても感動的で、仕方のないこととはいえ、アブサン以外の猫について書かれても、そこまで感情移入が出来ない。
「アブサン物語」以上の猫エッセイは書きようがないのではないか思ってしまった。
この「野良猫ケンさん」を取り上げておいて書くのも変な話だが、猫好きならまず「アブサン物語」を読むべし、と思う。

ここから先は本の内容とは関係がないカバーの話。
カバーに本の流通上必要なバーコードがなく、シールで応急処置をしている。
これは編集・製作サイドのチョンボだなあ。
まあ私もつい先日、日付けを間違えるという初歩的なミスをしてしまい、回りに迷惑をかけてしまったので、他人のことはまったくどうのこうの言えないが。
だが、シールが猫のイラストの一部にかかってしまうのを見ると、イラストレーターあるいは装丁家はさぞやお怒りのことと老婆心ながら心配をしてしまうのであった。
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2011年07月29日

二流ではなく一流のそれ

「二流小説家」 デイヴィッド・ゴードン著 青木千鶴 訳 ハヤカワ・ミステリ 読了。

6月26日から読み始め、7月3日に読み終えた。

題名は「二流小説家」だが、処女作にしてこの面白さ・遊び心、著者は決して二流の小説家ではない。

冴えない中年作家ハリー・ブロックを主人公にした小説。
このハリー、別のペンネームでSFやミステリ、吸血鬼もの、さらにはポルノ小説も書く。
だがそれだけでは生活できず、女子高生の家庭教師までやっている。
そしてその女子高生クレア・ナッシュからは小ばかにされる始末、確かに二流小説家と言ってしまっていいだろう。
そんなハリーにベストセラー執筆の大チャンスがやってくる。
服役中の連続殺人囚から告白本の執筆の依頼を受けたのだ。
迷った末に受ける方向で取材を始めるハリー。
そこから新たな展開が始まった。

詳しくは書かないが、一点だけそれってあり?とちょっと引っかかったところがある。
そこを除けば、非常に面白かった。
初めての読む著者の場合、慣れるまで結構時間がかかることが多いのだが、この本は違った。
二段組で400ページ以上ある大作にもかかわらず、頭から順調に読み進むことが出来た。

この小説を面白く読めた要因の一つに冴えない主人公に共感を覚えてしまったことがあげられる。
大学時代、私も大学時代小学生の家庭教師をしたことがある。
だがひと月もたたないうちにクビになってしまった、冴えないなあ。

一転、女性には魅力的なキャラクターが多い。
特に、女子高生のクレアのキャラクターに強く惹かれた。
なんとなくマンガ『ブラック・ジャック』に出てくるピノコを連想した。

今のところ著者はこの一作しか発表していないらしい。
これだけのものが書けるのなら、二作目・三作目も期待できそうだ。
日本での紹介を待ちたいと思う。
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2011年07月27日

日本語はやさしくふかい

「日本語教室」 井上ひさし 著 新潮新書 読了。

6月25日から読み始め、6月28日に読み終わっている。

私が購入したのは4月16日発行の第四刷、初版の奥付けが3月20日なっているので、奥付けを信用するのなら、ひと月たたないうちに3回も版を重ねたことになる。
そんなに話題作になっていたという記憶がないので、やはり井上ひさしの人気は根強いのかなあと思い、また井上ひさしが語る日本語の本だから売れているのかなあと読む前はそう思っていた。

井上ひさしが母校である上智大学で行った2001年10月から始まる四回の講演をまとめたものがこの本だ。
講演のテーマは日本語。
それぞれの講演の題目も記しておこう。
 第一講 日本語はいまどうなっているのか
 第二講 日本語はどうつくられたのか
 第三講 日本語はどのように話されるのか
 第四講 日本語はどのように表現されるのか

井上ひさしといえば小説家であり、劇作家であり、エッセイストでもあった。
長い小説ほど面白いという認識を持っていた。
また日本語に関するエッセイも読んでいて、書く文章もどこかで影響を受けているのではないかと思っている。
その井上ひさしが日本語について語る。
これが面白くならないわけがない。
実際読み終わって、版を重ねているのがよくわかった。

もともとが講演のせいか、書かれている文章が目からだけではなく耳からも入ってくるように感じた。
特に『駄洒落の快感』のところは、かなり私も気持ちが入ったところだった。
ここだけではなく、何度ひさし乙と心の中で言ったことか。

日本語の可能性についてもいろいろと考えさせられた。
かなわないことだが、もっと井上ひさしから日本語について教わりたかったと思った。
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2011年07月22日

才気みなぎる新人の作品

「叫びと祈り」 梓崎優 著 東京創元社 読了。

6月21日に読み始め、6月26日に読み終えている。

海外の動向を分析する雑誌社に勤める斉木を主人公とした全五話からなる連作短編集。
一話の「砂漠を走る船の道」は、第5回ミステリーズ!新人賞受賞作であり、この受賞作にさらに四話を加えて一冊の本にしている。
新人賞受賞作に書き加えて一冊の本にしたところは「告白」に似ているが、「告白」はあくまで長編だが、こちらは連作短編集。

しゃれではなく、一話一話に才気が感じられる。
ミステリとしてどうなんだという疑問を感じる話もあったが、それを補って余りあるミステリ作家としての才能を感じた。

特に題名にも使われている四話目の「叫び」と五話目の「祈り」には、かなり心を動かされた。
表題作として使われるのも納得の作品だと思った。
特に「祈り」は、この作品があるから連作短編集として意味を成すという、いわば作品の心臓とも言える話だ。

またミステリとしての楽しみだけでなく、サハラ砂漠やスペイン、南ロシア、ブラジル奥地といったいろんな地域を舞台にしているのも興味深く読めたことに一役買っている。
それにしても著者は、各国事情に詳しい。
文献から連想して執筆したのか、あるいは実際に現地を訪れた経験があるのか、ちょっと物語とは関係ないところに興味を持った。

著者は1983年東京生まれとある。
まだ20代の若さでこれだけの作品が書けるとは驚きだ。
まだまだ面白い本を書いてくれそうな雰囲気がある。
今度は長編が読みたいと思う。
posted by s-crew at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

詩学であり史学でもあり

「ベースボールの詩学」 平出隆 著 講談社学術文庫 読了。

6月15日から読み始め6月24日に読み終えている。

著者平出隆は大学教授だが、詩人・作家としても知られている。
あるいは一部の人には“プロの”草野球愛好家として知られているかもしれない。
ファウルズという草野球チームを主宰し、年間65試合(一時期のプロ野球の1シーズンの試合数の半分)を行っていた。
大学教授であり、詩人であり、草野球愛好家でありといった部分が絶妙にブレンドされた本がこの本だと思った。

野球にちなんでいるのだろう、全部で9章からなる。 
学術文庫に収められたこともあり、もっと統一性のある内容かと思ったが、アメリカあり、日本あり、歴史について深く掘り下げたと思ったら、野球の詩的側面を前面に出したりと統一性というよりは多様性が強く出ているように感じた。
あとがきを読んで知ったのだが、初出の発表雑誌がいくつかに分かれていて、そのことが多様性を強く感じた要因だと思った。

この本ははじめに筑摩書房から単行本として1989年に刊行された。
同時期に著者は岩波新書から「白球礼讃」という本を刊行した。
この「白球礼讃」は、出版されてすぐ購入して読んだ覚えがある。
こちらは草野球に関しての本だった。
「ベースボールの詩学」も書店の店頭で見かけた記憶はあるが、単行本ということもあり購入には至らなかった。
それが20年以上経ってから文庫になり、とうとう読むに至った。
何か歴史を感じる。

これからも単行本時には読まなかった話題作やロングセラーが文庫になったら、着実に押さえて読んでいこうと思う。
この本は、そういったことを再認識させる一冊となった。
posted by s-crew at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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